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名古屋高等裁判所 昭和58年(う)368号 判決 1984年9月11日

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役六月に処する。

この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人山本次郎、同畑良武共同作成名義の控訴趣意書及び弁護人山本次郎作成名義の控訴趣意補充書に、これに対する答弁は、検察官鈴木芳一名義の答弁書に、それぞれ記載されているとおりであるから、ここにこれらを引用する。

一  控訴趣意第二 事実誤認の論旨について

所論は要するに、

(1)  原判決は、その罪となるべき事実の項第一において、被告人は戸塚宏、加藤忠志、小杉信雄ほか多数と共謀のうえ、昭和五八年六月四日午後一一時ころ、原判示のとおり、鳥澤進方において同人に対し暴行を加えて、普通乗用自動車内に押し込み、同人を戸塚ヨットスクール合宿所に連れ込み、同所三階の格子戸付き押し入れ内に入れて施錠し、以後同月一六日までの間、右合宿所内及びその周辺等において終始同人を監視するなどして監禁するうち、同月七日脱出しようとした右鳥澤に暴行を加えて右合宿所まで連れ戻した旨認定しているが、右鳥澤を右合宿所内に連れ込んだのは小杉信雄と天野勝仁であって被告人ではなく、被告人はその後堺市の自宅に帰ったので右監視行為及び右暴行には関与していない、

(2)  また、原判決は、罪となるべき事実の項第二においても、前記加藤、相原和夫、平澤知己ほか多数と共謀のうえ、同月一八日午後九時ころ、原判示のとおり、小笠原節造方において、同人に対し、暴行を加えて普通乗用自動車内に押し込み、同人を同合宿所に連行して、同所三階の格子戸付き押し入れに入れて施錠し、以後同月二三日まで前同様に監視して監禁した旨認定しているが、右小笠原を前記格子戸付き押し入れの中へ入れて施錠したのは、相原和夫と平澤知己であって被告人ではなく、被告人は右犯行の日である同月一九日夕方から自宅に帰ってしまい右小笠原に対する監視行為には一切関与していない、

従って、被告人は、右各摘録の、原判決の各判示部分すなわち右合宿所における各監禁の事実については実行共同正犯としての責任を負わない。また被告人は、その体験から戸塚ヨットスクールの教育方針に賛同していたとはいえ、その運営等について関与したり指揮したりするような立場にはなかった者であり、加藤忠志コーチから「新人迎え」を頼まれて承諾しただけであって、その後の監禁行為についてはなんらの依頼も承諾もなかったので、右監禁及び原判示第一事実記載の同月七日における右鳥澤に対する傷害の点も含めて、原判決の前記各判示部分について共謀共同正犯の責任も負わない。従って、前記摘録の各事実を認定したうえ、被告人に対し本件各監禁致傷罪及び監禁罪に問擬した原判決には、事実誤認の違法がある、というのである。

所論にかんがみ、記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも参酌して検討するに、原判決挙示の関係証拠によれば、次の事実が認められる。

(一)  被告人は、不動産賃貸業に従事している者であるが、その二男が小学校高学年時からいわゆる登校拒否をするようになり、中学校に入学してますますその状態がひどくなったので、昭和五五年一月ころ、二男に、愛知県知多郡美浜町大字北方字宮東七〇番地の一所在の戸塚ヨットスクール株式会社(以下単に戸塚ヨットスクールと称する。)において合宿訓練を受けさせたところ、間も無く同人が病気になってしまったため、右合宿訓練は中止させたものの、その後同年春ころから被告人、その長男及び二男が大阪府貝塚市所在の同スクール大阪校に通い加藤忠志コーチの指導でヨットの操縦訓練を受けるようになって、同コーチを深く信頼するようになり、右子供達には春夏の休みに同スクールの合宿に行かせるなどし、昭和五八年六月同大阪校が休校になってからは、被告人は週末に右戸塚ヨットスクール合宿所にまで出かけて、ヨットの練習をし、あるいは時には加藤コーチ等に頼まれて同スクールの手伝いをしていたこと、

(二)  昭和五八年六月四日被告人は、右戸塚ヨットスクール合宿所において、加藤コーチ等から、小杉信雄コーチ及び訓練生天野勝仁とともに原判示鳥澤進(当時二二歳)を岐阜県山県郡伊自良村の自宅に迎えに行くように頼まれ、右加藤、小杉、天野等とその旨の意思を通じて、同行のうえ右鳥澤方に赴き、原判示第一の冒頭記載の日時場所において、同行を渋りその親に対して悪態をつく右鳥澤に対し右小杉が顔面を殴るなど被告人等において原判示暴行を加えて右鳥澤を無理矢理被告人所有の普通乗用自動車の後部座席に押し込み、さらに右小杉において同車内で鳥澤の顔面をさらに殴るなどして鳥澤を右戸塚ヨットスクール合宿所へ連行したこと、次いで翌五日午前二時ころ、右天野において右鳥澤を同所三階の格子戸付き押し入れ内に入れて施錠し(なお被告人は同現場には居合わせなかった)、以後、同スクール関係者ら(被告人を含まない)によって同月一六日まで同所及びその周辺において同人を終始監視して監禁したこと、右鳥澤は右暴行により加療約一週間を要する顔面(顎部)切創の傷害を受けたこと、被告人は、右鳥澤に対する監視行為には関与せず、右の六月五日夕方堺市の自宅に帰り、次の週末まで右合宿所に来なかったこと、同月七日右鳥澤は、同スクール訓練生竹内宏夫外二名の監規のもとに知多市舞子字落四〇の一所在の平病院に健康診断を受けるべく外出した際、右竹内らの監視の目を盗み逃亡しようとして平病院の南西約一・五キロメートル付近の民家に逃げ込んだところ、追跡して来た右竹内外二名により原判示のとおりビニールパイプ及び手拳等でこもごも背部等を殴打されるなど執ような暴行を受け、その結果全治七日間を要する右手切創及び背部挫創傷の傷害を負い、右合宿所に連れ戻されたことがあったが、被告人はこの件には全く関与せず、またその事実も知らなかったこと、

(三)  同月一八日被告人は、右合宿所において、相原和夫及び平澤知己とともに、加藤コーチ等から前同様小笠原節造(当時二八歳)を東大阪市の自宅に迎えに行くように依頼され、右加藤、相原及び平澤等とこの旨意思を通じ、同行のうえ右同人方に赴き、原判示日時ころ、原判示小笠原方仏間において、読経をしていた小笠原節造に対し同行を求め、これを拒否する同人に対しいきなり原判示のとおり、その両手首を所携のロープで縛り上げ、腕、足等を掴むなどして被告人所有の普通乗用自動車の後部座席に押し込み、被告人が右自動車を運転して、翌一九日午前二時ころ前記合宿所まで同人を連行したこと、次いで右平澤において同人を同合宿所三階の前記格子戸付き押し入れ内に入れて施錠し(なお被告人は同現場には居合わせなかった)、以後、同スクール関係者らによって同月二三日まで前同様同人を監視して監禁したが、被告人は右監視行為には一切関与せず、同月一九日夕方自宅に帰ったこと、

(四)  被告人は前記認定のように、かねてから、戸塚ヨットスクール合宿所に出入りしていて、同スクール関係者から説明を受け、あるいは自ら体験見聞して、同合宿所における訓練生への訓練方法の実情、あるいは同合宿所内の設備構造、とくに本件のようないわゆる「新人迎え」における同新人に対する処遇の大要、監禁場所の状況などを知悉していたこと、

などの事実が認められ、右事実によれば、被告人は、原判示各事実のうち右鳥澤及び小笠原を不法に逮捕して各自動車内及び前記合宿所に同人らを閉じ込め、原判示の各期間共犯者らにおいてそれぞれ同人らを右合宿所及びその付近において終始監視するなどして監禁したこと並びに右鳥澤に対する右逮捕監禁に際して小杉信雄が行った右暴行により顔面切創の傷害を負わせたことについては、被告人の犯意及び共謀を認めることができるから、被告人は右事実につき共謀共同正犯としての責任を負うものと解するのが相当である。

所論は、右認定の各事実中、各被害者を右合宿所三階の押し入れ内に入れて施錠し監禁した点につき、前記のとおり被告人には責任がない旨主張するが、前記証拠によれば、被告人が加藤忠志らからそれぞれ依頼を受け了承したいわゆる「新人迎え」は、情緒障害者である本件各被害者を、その治療ないし矯正教育の目的のために、本人の了解が得られない場合は有形力を行使して無理にでも右合宿所に連行し、同所内に閉じ込め監禁する趣旨を含み、被告人もこれを認識し認容していたと認めるのが相当であるから、原判示各共謀者のうち被告人以外の者によって行われた各被害者に対する監禁行為についても被告人が共謀共同正犯としての責任を負うと解すべきは当然であって、本件記録を精査し、当審における事実取調べの結果を参酌して検討しても、右の認定判断を左右するに足りる証拠はない。

しかしながら、原判決書によると、原判決はさらに原判示第一事実中前記の六月七日における右鳥澤に対する傷害の点についても、被告人の加わった前記共謀に基づく行為である旨認定しているものと解されるが、前記認定事実とくに被告人の同スクールにおける立場、加藤コーチ等が被告人に依頼し、被告人が了承した内容等を総合すると、被告人と右加藤、小杉及び天野等との共謀の内容をなす被告人の犯意は、右鳥澤を逮捕連行して相当期間右合宿所に監禁することはもとより、監禁行為を遂行継続するために通常予想される有形力の行使をも含むものと認めるのが相当であるとはいえ、それ以上に、被告人が、右監禁行為に随伴するものとして通常認識予見し得ないような暴行及びこれに起因する傷害についてまで右共謀による責任を認めるのは相当でない。そして、証拠によれば、前記のごとく、被告人は、前記鳥澤、小笠原両名をそれぞれ右合宿所に連行した後、同両名が前記天野あるいは平澤らによって右合宿所三階格子戸付き押し入れ内にそれぞれ収容される以前に右鳥澤、小笠原両名の許を離れており、以後右両名に対する監視行為には全く関与していないばかりか、被告人が帰宅した後の右両名の動静について全く関知せず、連絡も受けていない実情にあり、また、前記認定の右両名の連行に関する加藤コーチ等の依頼、指示の内容に被告人の戸塚ヨットスクールにおける立場をも考え併せ、さらに、原判決挙示の各証拠によって認められる前記鳥澤の右六月七日における脱走、被傷害の実情に照らして考察すれば、被告人にとって、同月七日の右鳥澤に対する前記暴行及びこれに起因する傷害は本件監禁行為に当然随伴するものとして認識予見し得る範囲を逸脱したものであったと認めるのが相当であるから、右鳥澤に対する右傷害の点につき被告人の犯意及び共謀に基づく犯行と認定した原判決にはこの点において事実誤認の違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであると認められるから、原判決はこの点において破棄を免れない。所論は、結局右の限度において理由があることに帰着する。

二  控訴趣意第一(同第三を含む)の論旨について

所論は要するに、

(1)  原判示第一及び第二記載の被告人らの各行為は、情緒障害者である本件各被害者の家庭内暴力に苦悩する親達が自らの懲戒権を被告人に委託し(成年の子に対し親の懲戒権を認めることは民法八二二条の明文に反するように見えるが、子の人格の健全育成という同条の趣旨からみると、その子が情緒障害者であって、現に家庭の平和を乱し法社会に脅威をもたらしている場合には、子に対する親の懲戒権はその子が成年に達したからといって失われないと解する。)、被告人が親達に代って右委託された懲戒権を必要な範囲内において行使したものであるから、刑法三五条にいう正当行為として違法性が阻却されるべきである、

(2)  また、右主張が認められないとしても、被告人の前記各行為は、本件各被害者の、その各家族の生命、身体、財産に対する急迫不正の侵害行為に対して、被告人らがやむを得ず行った正当防衛行為であり、かりにそうでないとしても自救行為に該当するから、違法性が阻却されるべきである。

(3)  かりに、以上の各主張が認められないとしても、本件証拠から認められる被告人の前記各行為における目的の正当性、緊急性ないし必要性、手段の相当性、被害の軽微性などを総合すると被告人の本件各行為は、可罰的違法性を欠くものと認められる、というのである。

よって、記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも参酌して検討する。

(一)  まず、所論(1)について考えるに、民法八二二条は、成年に達しない子の親権者に対し、必要な範囲内で自らその子を懲戒する権限を与えたものであって、右規定は成人に達した子の親にはもはや適用も準用もされないことは明らかである。従って、既に親権を有しない親の成年に達した子に対する懲戒権を根拠に被告人の本件行為が正当行為にあたるとする右所論は、法解釈上到底採用することはできない。

(二)  次に、所論(2)について検討するに、証拠によれば、原判示各被害者の家庭において、各家族は、いずれも相当長期間にわたり、右各被害者の家庭内暴力に苦しんだ末思い余って戸塚ヨットスクールに救いを求めたことから本件の発生に至ったことが認められるとはいえ、各被害者が右のような暴力を振うようになった背景には各家庭それぞれの事情があり、このような徴候が現われるようになってから、右小笠原においては既に約一〇年、また右鳥澤においても数か月という長期間を経過して右のような事態に至ったこと、被告人は、前記加藤らの依頼により当初から右各被害者方に赴き、同人等を連行し相当期間同スクール合宿所内に収容監禁し、同スクール独特の方式によるヨット訓練を基本とする治療ないし矯正教育を受けさせようとする目的で本件行為に及んだものであったこと、そして少なくとも被告人らが本件各被害者ら方に赴いた前後ころあるいはそれ以後において、現に各被害者がその家族に対し家庭内暴力を振うなどの状況があったとは認められないことなどが認められ、右各事実を総合すると、被告人らの本件各行為時においては、刑法三六条にいう急迫不正の侵害が認められないばかりか、被告人らの本件各行為は、本来、警察等公的機関の行うべき犯罪防止ないし抑止措置を待つことが出来ないような緊急事態において、自己又は他人の権利の私的防衛を必要な範囲において認めた同条の防衛行為には該当しないと解すべきである。従って、本件いずれの事案においても正当防衛の成立を認めることはできない。

また、権利侵害に対して、緊急の場合に自力により権利を回復することを認める自救行為の理論も、本件各事案においては適用の余地がないことが明らかである。

従って、本所論も採用の限りではない。

(三)  さらに進んで、所論(3)について検討するに、証拠によると、(1)前記認定のとおり、本件各被害者の家族は、各被害者の陰惨な家庭内暴力に悩み抜き、警察等公的関係機関にも相談したことがあるが、結局適切な解決策が見出せなかったとして、当時独特のヨット訓練を通じて、情緒障害児等の立ち直りをはかり、数々の成果をあげていると伝え聞いた本件戸塚ヨットスクールを頼みの綱として、これに右各被害者に対する前記のような治療ないし矯正教育を依頼したものであること、(2)被告人は、二男の登校拒否を直すために同スクールの合宿に参加させたことから、同スクールと関わりを持ち、被告人及び二人の子供が継続的に同スクールの訓練を受けていた、いわば同スクールの信奉者であったが、信頼する加藤忠志コーチ等から頼まれ、自らも被害者らが同スクールにおける訓練を受けることが各被害者の為になると考えて、いずれも他二名とともに被害者らのいわゆる「新人迎え」に赴いたものであること、(3)他方、被告人らが本件各被害者らを連行した方法を見ると、本理由一の項で認定したように、鳥澤進に対する案件では、同行を渋る右鳥澤に対し、小杉信雄において、いきなりその顔面を手拳で殴打してその抵抗を制圧し、三人掛りで右鳥澤を普通乗用車後部座席に押し込み、同車内で右小杉においてさらに右鳥澤の顔面を殴打するなどし、右暴行により右鳥澤に前記傷害を負わせたこと、また、小笠原節造に対する案件では、被告人らは、連行を強く拒否する右小笠原に対していきなり同人の体を押えつけて、所携のロープでその両手を縛り、三人掛りでその手足等を掴むなどして、同人を普通乗用自動車後部座席内に連れ込んだこと、そして、いずれの案件においても、被告人らは、被害者らが抵抗する場合には、連行するために必要な有形力を行使することを予定していたこと、さらに監禁行為については前記一の項において認定したとおりであることなどが認められる。

以上の事実を総合すると、被告人等が各被害者の家族の同スクールに対する切実な依頼に基づき、本件被害者等の為に良かれと考えて同人等を迎えに行ったその動機、目的、事情については、共感を覚える点がないでもなく、この点被告人のために酌むべき点が認められるけれども、本件被害者らを連行した方法及び監禁行為の態様は前記のとおり看過し得ないものであり、被告人自身は、右各行為にあたり、他の実行行為者に比してとくに重大な暴行を加えあるいは重要な役割を果しているとは言い得ないものの、他の実行行為者の行為を認容し、自らもこれらの者と協力して、右被害者らを押えつけあるいはロープで縛るなどして同人らを連行していること等にかんがみると、他の実行行為者と同様の責任を負担すべきものと解され、右各逮捕監禁行為を逐一観察すれば、やはり現在の法律秩序のもとでは、いずれも法的に許容される限度を逸脱し、前記のような被告人の本件行為の機動、目的を以てしてもこれを蔽い得ない程度の違法性を帯びているものといわざるを得ない。従って、本件各事案について可罰的違法性がないとする所論も採用し得ない。従って、本論旨は理由がない。

以上によれば、右説示のごとく、原判決は原判示第一事実において、前記戸塚ヨットスクール合宿所に各被害者を閉じ込めた後右監禁中に逃亡しようとした前記鳥澤に対し傷害を与えた事実についても、被告人らの共謀に基づくものであると認定した点において事実誤認の違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、破棄を免れない。

そこで、刑事訴訟法三九七条二項、三八二条に則り原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条但書に従い、当裁判所においてさらに判決する。

罪となるべき事実として、原判示各事実のうち、第一の一五行目から二一行目までの「同月七日、同人が脱出をはかって民家に逃げ込むや、これを追跡して同人の顔面を手拳で殴打し、腹部等を足蹴にし、同人の両手足をつかんで同人を右民家から路上に引きずり出し、その背部、顔面をビニールパイプ、手拳で多数回殴打するなどの暴行を加えて同人を右合宿所まで連れ戻し、更に引き続き、同所及びその周辺等において、同人を終始監視するなどして、」、同二三行目の「一連」、同二四行目の「及び右手」及び同二五行目の「背部挫創傷」の各部分を削除したその余の事実を引用し、証拠の標目として、原判決掲記の証拠の標目のうち、一〇行目の「司法巡査」を「司法警察員」と訂正し、一八行目の「竹内宏夫の司法警察員に対する供述調書謄本」を削除したうえこれを引用し、同掲記の法令の適用に示すところと同一の法条(ただし、原判示第一の所為の罰条中「二二〇条一項、」と「二〇四条」の間に「一〇条、」を挿入付加する。)を適用(併合罪の処理を含む。)し、その刑期の範囲内で被告人を懲役六月に処し、証拠によって認められる本件各犯行の動機、態様、罪質及び被告人には前科がないこと等の情状により、刑法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、なお、当審における訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用し、これを全部被告人に負担させることとする。

なお、本件公訴事実第一中六月七日鳥澤進に負わせた傷害の点については、右説示のとおり結局犯罪の証明がないものというべきであるが、右は一個の監禁致傷罪の一部として起訴されたものと認められるから、主文においてとくに無罪の言渡しはしない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉田寛 裁判官 土川孝二 虎井寧夫)

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